フード連合結成10周年記念「ガーナスタディーツアー」を実施1130日)
フード連合結成10周年記念
「ガーナスタディーツアー」を実施
10月6日(土)からの11日間、フード連合結成10周年記念行事の一つである、「ガーナスタディーツアー」が実施されました。
 今回参加したメンバーは(敬称略、労組名省略)、江森孝至(フード連合)、新井康平(明治グループ労連)、五野琢也(日本ハム)、蔵本寛基(名糖産業)、津崎暁洋(キッコーマン)、原田佳尚(全森永)、茂垣浩一(全たばこ)の7名で、今回のツアーの目的として、@食と児童労働の実態を通して社会的な責任について学習する、A世界の働く仲間との連帯をはかる、B国際労働運動を学習するという三つがあります。

在ガーナ日本大使館を表敬訪問
 まず、ガーナに到着したツアーメンバーは在ガーナ日本大使館に訪問し、ガーナ国内の情勢や主な産業、そして児童労働の状況等について説明を受けました。
 ガーナ国内の情勢は、「石油の輸出生産が始まり、経済成長率も高くなってきているが、国の債務が多く、石油も国内のインフラ整備対応での使用量が多く、まだまだ課題が多くある」、「金・カカオ豆・木材・石油等の輸出が主な財源となっているが、中国などからの輸入に頼っている側面もある」、「経済力の向上や雇用創出に向けても、国内における産業の育成が重要な課題である」、「停電が多いことや安全な水の確保が恒常的な問題となっている」ということでした。
 児童労働については、「一世帯当たりの人数に対する所得の低さといった経済的な問題があり、その所得を補うために子供が働くという実態がある」、「児童労働はあってはならないが、児童労働が無くなった場合の生産量を補うことができるのかという課題が顕在化している」ということで、ガーナにおける児童労働撲滅に向けては、いろいろな観点から対策を講じていく必要があることを学びました。

現地の子どもたち
 次に、ツアーメンバーは、カカオ生産地域を訪れ、村の人々や学校の先生たち、そして子供たちとの交流をはかりました。村の人々は、村で飼っている大切な羊を使った料理をご馳走してくれました。また、村の人々と話し合う場を設けるなど、訪問したツアーメンバーを気持ちよく受け入れてくれました。この歓迎にツアーメンバーは本当に嬉しく感じるとともに、暖かく歓迎してくれた背景として、NGO団体ACE(エース)や現地のパートナー団体であるCRADA(クラダ)が、これまで児童労働をなくすために子供たちの教育環境を良くしようと、村全体を巻き込んで一つひとつ積み上げてきた活動があるからだと実感しました。

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カカオ生産地域を訪れ、村の人々や学校の先生たち、そして子供たちとの交流をはかった

 村の学校のほとんどは、教室数や先生の人数が不足しているなどの課題はありますが、子供たちが熱心に勉強する姿を見ることができました。また、フード連合より子ども達にサッカーボールとユニフォームをプレゼントした際には、「大統領」や「医者」といった子供たちの将来の夢も聞くことができました。
 ツアーメンバーから、こうした現地の人々とのふれあえたことで、「日本は教育環境にも恵まれ、生活も豊かだからこそ、普段感じることがあまりない、教育の大切さや、人としての心の豊かさを感じることができた」という感想がありました。

カカオ畑を訪問し、農家の皆さんからカカオの栽培から収穫・出荷までの行程など、そして児童労働の問題について話を聞いた。
 また、ツアーメンバーは実際にカカオ畑を訪問し、農家の皆さんからカカオの栽培から収穫・出荷までの行程などについて話を聞きくことができました。農家の皆さんの話では、この村の農家では以前、児童労働があったそうです。しかし、子供たちの将来を考え、教育を受けさせる重要性を知り、児童労働をなくしたそうです。
 その農園で児童労働があった当時は「子供が働くことは当然」という大人たちの考え方があったようですが、「子供は教育を受けることが当然」という考えに変えていくことが、児童労働をなくす上でも重要なことだとツアーメンバーは実感することができました。

GAWU(ガーナ農業生産者組合)との意見交換を実施し、組織化や組合員の収入向上に向けた取り組みについて聞く
 また、GAWU(ガーナ農業生産者組合)との意見交換では、組織化や組合員の収入向上に向けた取り組みなど労働組合の現状や課題等について知りました。また、チョコレート工場視察では、製造工程や労働環境等について勉強しました。
 今回のガーナスタディーツアーに参加したメンバーの声として、「とにかく村の子供たちの輝く目、村の方々の温かい心が印象に残っている」、「ガーナの文化や風土にも触れることができ、今の生活が当たり前と感じてきた自分自身を見つめ直す良い機会となった」、「『児童労働』についてあらためて考えるとともに、今回の経験を今後の組合活動のなかにおいても活かしていきたい」というものでした。
 フード連合結成10周年記念行事の一環として企画された本ツアーを通じて加盟単組とフード連合の将来を担う組合役員の育成の機会のひとつになったと思います。

村の子供たちの輝く目、村の方々の温かい心が印象に残った

番外編

世界遺産であるエルミナ城を訪問。大西洋奴隷貿易の主要な拠点として栄えた忌まわしい過去がある
 ツアーメンバーは、ガーナの国情や児童労働の問題に触れる視察に加え、世界遺産であるエルミナ城を訪問しました。
 1482年にポルトガル人によって建てられたこの城は、サハラ以南で最古のヨーロッパ建築。当初は金や象牙の輸出のための貿易港として機能しましたが、17世紀以降の200年間は、大西洋奴隷貿易の主要な拠点として栄えました。
 奴隷貿易の悲惨さの一つは、それを促進したのが、「西欧」対「アフリカ」という構造だっただけではなく、そこに“slave catcher”と呼ばれる部族集団が存在したことです。部族間の対立構造を巧みに利用した西洋人たちに踊らされた彼らは、敵対する部族を捕らえては、銃器や布などと引き換えに彼らを売り飛ばしました。
 エルミナ城には、アフリカ系アメリカ人の訪問客が多く、彼らの多くが、自らのルーツを探り、祈りを捧げるために訪れるということです。アメリカのオバマ大統領一家も同地を訪れています。

 以下、当時のオバマ大統領のコメント記事の抜粋。
「われわれは邪悪さを容認し、それを支持することがあるし、正しいことだと思って自ら手を染めることさえある・・・恵まれた環境で育った2人の娘にとっては、歴史のなかで人間がいかに残酷になることがあるか知ることが重要だと思う。2人には今回の訪問を通して抑圧や残酷な行為と戦うことへの責任感を持って欲しいと願っている・・・ここは深い悲しみの場所であると同時に、アフリカ系米国人の大半が経験した旅の起点でもある。アフリカ系米国人として特別の感情を覚える」

 奴隷貿易は、ガーナだけではなく、アフリカのほとんどの人々に関わる生々しい歴史です。たまたま一緒に視察時に一緒になった現地の女性たちが史跡を見て回る中で、一様に言葉を失うのを見て、「どんなに想像力を働かせても、私たちとは身に迫るものが違うのかもしれない」と感じ、そして、「奴隷貿易の過去は今のアフリカを理解する上でも決して忘れてはいけない記憶なのだ」とツアーメンバーは感じたということでした。

奴隷貿易は、ガーナだけではなく、アフリカのほとんどの
人々に関わる生々しい歴史。現地でそんな思いを抱いた