不安定雇用問題と多国籍企業対策が国際労働運動における大きなテーマに―第26回IUF世界総会が開催65日)
IUF世界総会は本部のあるスイス・ジュネーブで開催された
 5月14〜18日の日程で、「IUF三役会」、「IFU執行委員会」、「第26回IUF世界総会」がスイスのジュネーブで開催され、フード連合からはオブザーバーを含め9名が参加しました。IUF世界総会は5年に1度に行われ、今回の第26回IUF世界総会は「組織化して闘い、勝利する」をスローガンに開催されました。

日本の派遣団を代表して登壇し、スピーチする江森会長
 総会では、@本部や各地域の5年間の活動、A財務などが報告されるともに、@不安定雇用との闘い、A持続可能なグローバル食料制度、Bより強いIUFの構築、C政治的な勝利、等について、ゲストや加盟組織からのプレゼンテーション、パネルディスカッションなどを通して討議され、確認されました。
 また、規約改正や選挙が行われ、選挙ではニルソン会長、オズワルド書記長の再任の他、日本からの執行委員、三役会の選出について確認されました。

日本における非正規労働者の組織化の取り組みについてスピーチする松谷会長代行
 今回の総会では、特に、「不安定雇用」と「多国籍企業」の問題が大きなテーマとなりました。
 国内需要が減少しているなかで、日本の大手食品企業も急速にグローバル化し、多国籍企業化が進んでいます。
 また、昨年はOECDの「多国籍企業ガイドライン」が改定されました。組合もこうした動きを踏まえながら経営に提起等を行い、チェック機能を発揮していく必要があります。そのことが企業ブランドを傷つけることを防止することにつながります。

日本における取引慣行に関する実態とフード連合の取り組みについてスピーチする岡野男女平等局長
 多国籍企業だけが儲ける一方で、海外のグループ企業で、児童労働が行われていたり、労働組合つぶしが行われていたり、不公正な労働基準がまかり通っていたのでは、多国籍企業の労働組合として、社会的な役割を果たしているとは言えません。世界の労働運動から学び、経営へのチェック機能を強化し、社会的な役割を発揮していくためにも、グローバル企業にふさわしい労使関係を築いていく必要があります。
 懸案となっていたIUF会費の増額については、5年間、毎年0.1スイスフランの値上げが採択されました。値上げに対する日本の強い懸念に応じ、本部からは提案に至るまでのコミュニケーションの改善と、活動・財政計画を早期に提示について言及がありました。

FGA-CFDTの本部役員の皆さんと国際労働運動について意見交換を行う
 合わせて、5月21日に「IUF-JCCフランス視察団」が開催され、フランスのIUF加盟組織FGA-CFDT(本部:パリ、食品・農業関連の産業別労働組合)を訪れての情報交換や、製粉工場(グラン・モーリン・パリ)の見学等を行いました。
 FGA-CFDTとの会合の中で、日仏両国の労使関係、労働環境の違いなどを共有し、そして、労働組合が直面する特徴的な課題について互いに自国での取り組みを交えながら意見交換を図りました。

Grand Moulin De Paris製粉工場の外観
 そして、不安定雇用問題(日本でいう非正規労働者の増加)に対しての欧州の労働組合の取り組みと日本の労働組合の取り組みについて意見交換を行いました。また、グローバル化する世界経済と多国籍企業問題への対応についてどうあるべきかの観点で、日本とフランス両国における労働組合が果たすべき役割や現状の課題などの意見交換を行いました。
 多国籍企業問題については、日本では、まだ多くの企業や企業別労働組合にとって"対岸の火事"という捉え方ではあることはいなめません。しかし、グローバル化する世界経済の枠組みの中に日本も既に加わっており、日本の労働組合の果たすべき役割もまた拡大しています。また、国際的な枠組みでの労働組合同士による連携と相互理解などが多国籍企業問題の課題解決のカギの一つになります。

フード連合・江森会長(真ん中)、IUF-JCC・中田事務局長(左)とFGA-CFDT・マサール書記長(右)
 そうした中で、欧州の労働組合は多国籍企業への対応など国際労働運動への貢献の必要性を自覚し、発展途上国の労働者の支援活動を始めとして様々な活動を行っています。自国での活動以外に当該国の労働者の権利を守ることが、強いては自国の労働者の権利を守ることになると考え、取り組みに注力しています。日本から見れば、こうした欧州の労働組合による国際労働運動についての考え方は学ぶ点も多く、日本の労働組合もより大きい視点で労働運動を展開する必要性を感じました。

FGA-CFDTの本部役員の皆さんとIUF-JCCの派遣団
 FGA-CFDTとの会合の中で、特に印象に残っている話として、フランスでは、移民労働者の増加という社会問題があり、日本から見れば「移民労働者の増加により結果としてフランス人の雇用の場を奪っているのでは?」と考えてしまいます。しかし、フランスの労働組合の視点では、移民労働者も労働組合として組織化する必要があると同時に、移民労働者が法定最低賃金以下で働かされている、安全衛生基準を満たさない劣悪な職場環境で働かされる等、違法な労働環境で働かされていること自体が問題であり、適法な環境下で働けるように労働組合が取り組むことが、結果として労働者全体の権利を守ることにつながると考える点について聞き、改めて労働組合がその社会的役割を担い、社会性を発揮することの大切さを実感しました。(フード連合 組織・中小局長 山田 毅)