環太平洋経済連携協定(TPP)交渉参加協議に対する談話1115日)
                           日本食品関連産業労働組合総連合会
                           事務局長 山本 健二
1.野田総理は、ハワイで開催されたアジア太平洋経済協力会議(APEC)で、環太平洋経済連携協定(TPP)交渉参加に向けて関係国と協議に入ることを表明した。
この内容は、「民主党・経済連携プロジェクトチーム」がまとめた「TPPへの交渉参加の是非の判断に際しては、政府は、懸念事項に対する事実確認と国民への十分な情報提供を行い、同時に幅広い国民的議論を行なうことが必要である」とした考え方を踏まえたものであると受け止める。
2.フード連合は、昨年秋に菅前総理がTPP参加に向けて発言して以降、「十分な情報提供による国民的議論」を求めてきた。
しかし、政府の情報開示が進まないため、独自の学習会や情報収集を進め、2011年3月10日の中央執行委員会で、「TPPは、農業も含めた国内産業や雇用に深刻な影響をもたらすものである。農産物で言えば、TPPに参加することによって、アメリカやオーストラリアなどの大規模農業国から、牛肉、小麦、乳製品、砂糖などの重要品目についても関税の撤廃を受け入れざるを得ず、食料自給率や食の安全の問題も含め、私たちの働く食品関連産業は大きな打撃をうけることになる」とのTPPに対する考え方を明らかにし、「TPPへの参加に反対する」ことを確認した。

3.野田総理とオバマ米国大統領との会談後、米国側は「首相が『すべての物品およびサービスを交渉のテーブルにのせる』と発言した」と発表した。日本政府は否定しているものの、交渉の原則が「例外なき関税撤廃」であることは厳然たる事実である。国内向けと対外向けで発言内容が異なるようなことがあってはならない。
また、今後のスケジュールを考えれば、事前協議への参加を通じて「日本がTPPのルール作りに関与する」ことが可能なのか疑問もある。
今後、TPPへの参加に向けた事前協議がはじまるなかで、これまで懸念されてきた課題が明確になってくる。それだけに、今後の事前協議内容や進捗状況、課題等について、政府が透明性を持って説明責任を果たしていくことが不可欠である。また、アジアの成長を取り込むのであれば、中国や韓国、インド、タイ、インドネシア等との経済連携を強化していく必要がある。
米国主導のTPPのみに傾斜した経済連携では、アジアの成長を取り込むことにはならない。
4.フード連合は、野田総理が会見で発言した、「日本の医療制度、日本の伝統文化、美しい農村は断固として守り抜き、分厚い中間層によって支えられる安定した社会の再構築を実現する」とした考え方を、日本政府が事前協議のなかで明確に主張していくことを求める。また、TPPが農林水産、食品、医療、介護、労働をはじめ幅広い分野に影響を及ぼす可能性があることを踏まえ、今後の事前協議を通じて政府が説明責任を果たし、国民的な議論を通じてTPP参加への賛否を判断することを求める。
―以 上―