連帯のグローバル化で非正規労働者対策や多国籍企業対策をすすめる−IUF・アジア太平洋地域委員会−1126日)
IUFアジア太平洋地域委員会に出席したメンバー
 11月21日・22日の2日間にわたって香港でIUF・アジア太平洋地域委員会(以下、IUF・AP地域委員会)が開催され、フード連合からは、金副会長(IUF/JCC議長、全たばこ労組委員長)、 松谷副会長(敷島製パン労組委員長)、立石副会長(キリンビール労組委員長)、江森事務局長(IUF/JCC副議長)、山本副事務局長(IUF/JCC運営委員)、山田組織・中小局長(IUF/JCC副運営委員)、の6名に加えて、中田IUF/JCC事務局長(フード連合特別中執)、西脇味の素労組委員長が参加しました。
 地域委員会では、@メンバーシップ、A書記局活動、B地域委員会および執行委員会の構成、C連帯活動、Dプロジェクト活動、E女性労働者に関する活動、F多国籍企業、G人事事項等について協議し、確認しました。
 また、IUF/JCC中田事務局長から日本における労働運動の現状とIUF/JCCの活動について報告があり、確認されました。日本側からは「不安定雇用(日本では「非正規雇用」と呼ぶ)」への取り組みは、諸外国のように「不安定雇用」から「正規雇用」への転換のみを優先するものではなく、まずは非正規雇用労働者の組織化を進め、労働組合の一員とすることで、労働組合として企業側とこの問題を協議する環境を作りながら、非正規雇用労働者を正規雇用に転換することを含むすべての労働条件の改善を進めていると報告しました。加えて、近年増加しているAP地域における日本企業の資本が投入された現地企業での労使紛争への対応について、現地の労働組合が単独で争議等の行動に移すのではなく、IUF/JCCへの事前連絡するとともに、同組織を通じて日本の親企業にある労働組合(単組)及び当該産業別労働組合(産別組織)と連携して、諸問題の解決に向け対応していくよう訴え、日本側の提案は確認されました。
 来年10月に開催されるIUF・AP地域総会に向けた課題や決議事項について各加盟組織からいくつか提案がありました。その中で、日本側から「不安定雇用」の増加とそれによる雇用の不安定化が各国で引き起こされており、この問題を世界共通の課題であるという認識を各国が共有し、欧米や日本などの多国籍企業が増加している現在のグローバル化が進む経済環境に対応するためにも、不安定雇用労働者(非正規雇用労働者)の組織化についての会議等を開催し、各国で組織化に取り組むべきであると提案しました。課題や決議事項については、来年春までに各組織の意見を出し、AP地域委員会としての課題案を作成することになりました。
 また、EPA(経済連携協定)、TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)などの二国間、多国間に関わる経済協定について、これらは国レベルの問題であり、この問題は貿易によるモノの移動だけではなく、お金や人の行き来も自由にするものであり、そうなれば現在のAP地域に見られるような移民労働者の搾取という問題をより一層助長することが想定され、強いては「不安定雇用の増加」という懸念が想定されるため、この問題に対する協調・協力体制が各国の労働組合の間にも必要であるという意見も出されました。

HKCTU20周年記念大会の模様
 また、地域委員会の決議事項として、「不安定雇用」が各国における労働組合権、組合の交渉力及び雇用基準に対して深刻な脅威を呈し続けていることを踏まえ2011年のIUF・A/P地域総会に向け、IUFのすべてのセクターで域内の同様のキャンペーンに対する支援を拡大させ、また「不安定雇用」の課題を優先させることを決意するという決議案について、日本側から「不安定労働者の組織化と一体的に取り組むこと」を加筆するよう提案しましたが、各国の情勢が異なり「組織化」より「不安定雇用から正規雇用に転換させる活動」を進めることが最良であるという意見もあり、特に「不安定雇用労働者が組合の団結権を有さない」、「不安定雇用労働者の団体交渉権が認められていない」等の国内事情を持つ国もあることも考慮し、この問題に対して積極的に取り組むものの対策法については各国の現状を考慮して対応をしていくべきであるとして、不安定雇用労働者の組織化を含めたあらゆる対応をしていく旨が決議されました。
 21日午後には、香港城市大学(City University of Hong Kong)で行われた香港労働組合総連合(以下、HKCTU)の20周年記念大会に出席しました。
 HKCTUの創立20周年を記念し、その歴史と活動における課題について香港、AP地域、ヨーロッパ地域等の各地域からパネラーを招き、パネルディスカッション形式で開催されました。
 特にグローバル化する経済に対する労働組合として取り組むべき課題について、多国籍企業がグローバルに展開する現状に対し各国の労働組合が連携していく必要性について触れられました。また、世界中で移民労働者を含む「不安定雇用」の労働者が増加しており、この問題に対して各国の労働組合がバラバラで活動するのではなく、各国の労働組合が協調・協力してこの問題に対応していかなければならないという見解が示されました。