消費税の逆進性緩和対策勉強会を開催!1119日)
明治大学政治経済学部星野教授
 11月8日(月)、社会産業政策委員会の中で、消費税の逆進性緩和対策をテーマに勉強会を実施しました。明治大学政治経済学部の星野泉教授を講師としてお招きし、諸外国の消費税の実状と、軽減税率や給付付き税額控除のメリット・デメリット等について、お話頂きました。勉強会の内容要旨は以下の通りです。また、詳細は添付資料をご確認ください。

勉強会参加者(社会産業政策委員)
 EU諸国は税金が高い国が多く、消費税は20%前後である。特にスウェーデンは税金全般が高く、国民の可処分所得が少ない。従って、買い物や娯楽にお金を使う余裕がない。スウェーデンは女性が働きやすい国と評されるが、働きやすいのではなく、女性も働かなければ生活できないのである。その雇用の場は、女性の7〜8割、男性の4割が公務員で、手厚い福祉国家となっている。 

 一方、日本は国際的にみると税金が安く、また公務員の数も少なく、財政規模も決して大きくない。日本が税金を払わない国になってしまったのはなぜか?
 バブル崩壊以降、景気対策として減税(or公共事業)が進められた。その結果、「手取りが増える」→「消費が増える」→「さらに減税を進める」という悪循環に陥り、日本国民は、「手取りが増えることが幸せ」という構図に当てはめられてしまった。今の若い世代は、40歳〜50歳代の世代と比較すると、税金をほとんど払っていないと言ってよい。日本の税体系は全体的にインフレ対応型であり、所得税の最高税率は、この間大幅に引き下げられ、労働組合も一体となって、各種控除制度(基礎控除・所得控除・配偶者控除等)等の減税を推し進めてきた。
 80年代以降減税を進めた背景には、89年の消費税導入があるが、実際には、消費税の前身である物品税を含めた税収と、消費税導入後の税収は、対GDP比でほとんど変わっていない。景気対策=減税のツケが回ってきて、現在消費税の増税という議論が巻き起こっている。

 消費税を引き上げる場合、一律ではなく、その対象をどうするのかという観点は重要だと考える。また、カナダのように、低所得層に直接給付するという方法もある。今後、軽減税率や給付付き税額控除の両方を議論していく必要があるだろう。
 軽減税率を採用する場合、7〜8%の税率ではなく、少なくとも10%以上にしなければ、その効果は薄いと言われている。財務省などは、10%までなら一般課税にしたいと考えているだろう。また、何を対象にするかは大きな議論になるだろうが、いくつか諸外国の例を取り上げて、平均をとるという考えが妥当ではないかと思う。
 一方、給付付き税額控除のメリットは、制度がシンプルなことである。納税者番号制度を導入しないと実現できないと言われるが、必ずしもそうではないと考えている。また、インボイス方式の導入に難色を示す企業があるが、そのような企業は、あまり帳簿を明らかにしたくない(されたくない)企業であり、問題外である。

 いずれにしろ、消費税だけでなく、日本の税体系全体を考えていかなければならない。例えば、所得控除は金持ち優遇であり、あるべき姿は、全員から広く税金を徴収し、子ども手当や住宅手当等で還付するべきだと考えている。
 日本は所得税が徴収しきれていない。年金をもらっている、支払い能力のある高齢者からも所得税を徴収するべきであり、所得税の最高税率も上げていくべきである。

 その上で、消費税を引き上げる意味をしっかり考えなければならない。規模の経済性でいえば、日本は消費税25%までしなくとも、スウェーデン並みのサービスは受けられる。「減税すれば幸せ」という意識から脱却し、真に幸せな税体系を考えていってほしい。

資料T
資料U(P20−P25)

以 上